腎臓が悪い猫・犬に水分補給が大切な理由
共有
〜脱水を防ぐための具体的な水分補給の工夫〜
監修:岡田 京子 先生(獣医師・医学博士 往診専門 るる動物病院 院長)
腎臓と水分の深い関係
腎臓は血液を濾過して老廃物を尿に変え、体外に排出する臓器です。この働きには十分な水分が欠かせません。腎機能が低下した猫や犬では、腎臓が尿を濃縮する力が弱まるため、通常より多くの水を必要とするケースがあります。
一方で飲水量が少ないと脱水が進み、血液が濃縮されて腎臓への負担がさらに増すという悪循環に陥ります。十分な水分補給は腎臓病のケアにおいて基本中の基本です。
※ 多飲多尿(水をよく飲む、おしっこが多い)は腎臓病を含むさまざまな疾患のサインのひとつです。気になる場合は早めに動物病院を受診してください。
猫は特に水分不足になりやすい
猫はもともと砂漠を起源とする動物で、あまり水を飲まない性質があります。野生では獲物の肉から水分を摂取していたため、水飲み場から積極的に水を飲む習慣がついていない個体も多くいます。
ドライフードだけを食べている猫は特に水分不足になりやすく、慢性的な水分不足が腎臓への負担を増やす可能性があると考えられています。腎臓病の猫には、できる限り水分摂取量を増やす工夫が重要です。
水分摂取量を増やすための具体的な工夫
① 水飲み場を複数・分散して設置する
猫や犬は食器と水入れが近いと水を飲まないことがあります。家の中の複数の場所に水飲み場を置くことで、自然と飲む機会が増えます。
● トイレの近く・寝床の近く・リビングなど複数箇所に設置
● 食事場所と水飲み場所は少し離した方が好む動物もいます
● 常に新鮮な水を用意してこまめに取り替える
② 流れる水を好む場合はファウンテン型を検討
流れる水を好む猫は少なくありません。ウォーターファウンテン(循環型給水器)を使うと飲水量が増える場合があります。
● ポンプで水を循環させて常に動きのある水を提供
● フィルター付きのものは不純物を除去できます
● 定期的な洗浄・フィルター交換が必要です
③ ウェットフードを取り入れる
ドライフードの水分含有量は約10%程度ですが、ウェットフード(缶詰・パウチ)は70〜80%が水分です。ウェットフードに切り替えるか混ぜるだけで、食事から摂れる水分量が大きく増えます。
● 腎臓病用の療法食にもウェットタイプがあります
● ドライフードにお湯や水を少量加えてふやかす方法も有効です
● 急な食事変更は消化器に負担をかけることがあるため、少しずつ移行してください
※ 食事内容の変更は担当の獣医師にご相談の上で行ってください。
④ ドライフードにぬるま湯を加える
普段のドライフードに少量のぬるま湯を加えてふやかすだけで、手軽に水分量を増やせます。冷たい水より少し温かい方が香りが立ち、食欲を刺激する効果もあります。
● お湯の量は食器の底に少し溜まる程度から試してみてください
● 食べ残しは傷みやすいため、早めに片付けてください
⑤ 水の温度・素材への工夫
水の温度や器の素材・形にこだわりを持つ動物もいます。
● 冷たすぎる水を好まない場合は常温に近い水を試してみてください
● プラスチック製の器が苦手な猫もいます。陶器やステンレス製に変えると飲むようになることがあります
● 器の深さが気になる動物には、浅めの皿状のものが向いている場合があります
脱水のサインを知っておこう
以下のような様子が見られる場合は脱水のサインの可能性があります。
● 皮膚をつまんで放したときに戻りが遅い(ツルゴール低下)
● 口や歯茎が乾燥している・粘つく
● 目がくぼんで見える
● 元気がない・ぐったりしている
● 尿の量が極端に少ない(※腎臓病では尿が薄く色が薄いことが多いため、尿の色だけで脱水を判断することは難しい場合があります)
※ 上記の症状が見られる場合は速やかに動物病院を受診してください。自己判断での水分補給の強制は危険な場合があります。
まとめ
水分補給は腎臓病ケアの基本であり、日常の工夫で改善できる部分も多くあります。水飲み場の分散設置、ウォーターファウンテンの導入、ウェットフードの活用など、お家の環境や動物の好みに合わせてできることから試してみてください。
飲水量が著しく少ない、または急激に変化した場合は、腎臓病以外の原因も考えられます。気になる変化があれば早めに担当の獣医師にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による個別の診断・治療・処方の代替となるものではありません。ペットの健康に関する最終的な判断は、必ず担当の獣医師にご相談ください。
詳しくは免責事項をご確認ください。