血液検査の見方:BUN・クレアチニン・リンの数値を理解する

血液検査の見方:BUN・クレアチニン・リンの数値を理解する

〜検査結果を渡されても何を見ればいいか分からない飼い主さまへ〜

監修:岡田 京子 先生(獣医師・医学博士 往診専門 るる動物病院 院長)

「数値が高い」と言われたけど、どういう意味?

動物病院で血液検査を受けた後、「BUNが少し高めですね」「クレアチニンの値が上がってきています」と言われた経験はありませんか。数値の紙を受け取っても、何が正常で何が問題なのか分かりにくいという飼い主さんはとても多くいらっしゃいます。

腎臓に関わる主な検査項目の意味を理解しておくことで、定期検査の結果をより正確に把握し、日常ケアに活かすことができます。

血液検査の基準値は検査機関・動物病院によって異なります。数値の解釈は必ず担当の獣医師に確認してください。

腎臓に関わる主な検査項目

BUN(血中尿素窒素)

BUNBlood Urea Nitrogen)はタンパク質が体内で分解された後に生じる老廃物「尿素」の血中濃度です。腎臓が正常に機能していれば尿として排泄されますが、腎機能が低下すると血液中に溜まり数値が上昇します。

▶ BUNが高い場合の意味

腎臓の濾過機能が低下しているサインのひとつです。腎機能の低下のほか、高タンパク食・脱水・消化管出血などでも上昇するため、単独での評価は通常しません。

▶ BUNが高いときに気をつけること

タンパク質は過剰摂取を避けつつ、必要量は確保することが重要です。制限の程度は病期によって異なるため、必ず担当の獣医師にご相談ください。また十分な水分補給で脱水を防ぐことも助けになります。

クレアチニン(Cre

クレアチニンは筋肉のエネルギー代謝で生じる老廃物で、ほぼ腎臓のみで排泄されます。腎臓の糸球体濾過機能の低下を反映しますが、腎機能がおよそ75%低下しないと基準値を超えないため、早期発見には不向きな面もあります。後述のSDMAと組み合わせた評価が重要です

クレアチニンが高い場合の意味

腎臓の糸球体濾過機能の低下をより直接的に示します。筋肉量が少ない動物では実際より低く出る場合があり、数値単独では評価せず総合的に判断する必要があります。

▶ SDMAとの関係

SDMAは腎機能がおよそ25%低下した段階から上昇するとされており、クレアチニンより早期に腎機能低下を検出できるといわれています。ただし単独での評価には限界もあるため、クレアチニンや尿検査、画像検査などと組み合わせた総合的な判断をする必要があります。

SDMA(対称性ジメチルアルギニン)

SDMAは近年普及した比較的新しい腎臓マーカーです。体内タンパクのメチル化・分解過程で生じる代謝産物で、主として腎臓から排泄されるため、血中SDMAは腎糸球体濾過量(GFR)の低下を反映しやすい腎機能マーカーとして利用されます

クレアチニンより早期に異常を検出できる

クレアチニンは腎機能低下だけでなく筋肉量などの影響も受けるため、個体によっては腎機能低下の検出が遅れることがあります。SDMAはCrより筋肉量の影響が小さく、GFR変化をより敏感に反映し得るため、早期評価に有用な場合があります

筋肉量の影響を受けにくい

クレアチニンは筋肉量が少ない高齢の猫や痩せた動物では実際より低く出ることがあります。SDMAは筋肉量や食事の影響を受けにくいため、体格や体型に関わらず腎機能をより安定して評価できると考えられています。

▶ SDMAだけで判断しない

SDMAは有用な指標ですが、一度の検査で高値が出ても必ずしも腎臓病とは限りません。個体差によるばらつきもあるため、持続的に高値が続くかどうかや、クレアチニン・BUN・尿検査などほかの検査項目と合わせて総合的に評価することが重要です。

急成長期(小型犬では約6か月齢まで、大型犬では約2歳齢まで)の生理的変動によりやや高値を示す可能性があるため、尿検査・他の腎疾患所見の確認と、成長期後の再検査が推奨されます。猫では成長期の影響はないと言われています。

※ SDMAは動物病院によって検査メニューへの組み込み状況が異なります。検査を希望する場合は担当の獣医師にお問い合わせください。

リン(P

リンは骨や細胞の構成に必要なミネラルですが、腎臓病が進行すると血中に蓄積しやすくなります。血中リンの上昇は腎臓の組織をさらに傷つけるとされており、腎臓病の進行を加速させる要因のひとつと考えられています。

リンが高い場合の意味

腎臓でのリン排泄が追いついていない状態です。食事管理(リン制限)やリン吸着剤の使用が検討される場合があります。

日常ケアでできること

リンを多く含む食材(乳製品・臓物・豆類など)を控えることが助けになります。詳しくはリン管理の記事をご参照ください。

その他の関連項目

腎臓病の管理では以下の項目も一緒に確認されることが多いです。

● カリウム(K):腎臓病では低下しやすく、低カリウム血症は筋力低下の原因になります。一方、腎機能が重度に低下し尿がほとんど作られない状態である「乏尿・無尿」の場合は高カリウム血症になるリスクがあるため、定期的なモニタリングが重要です。

● ナトリウム(Na):体内の水分バランスに関わります

● 尿比重:尿の濃縮能力を示します。腎機能低下では薄い尿になりやすくなります

● 血圧:腎臓病では高血圧を合併することがあり、定期的な測定が推奨されます

IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)のステージ分類

慢性腎臓病(CKD)の重症度はIRISという国際的な基準でステージ1〜4に分類されます。クレアチニン値とSDMA、さらにリン値や血圧・タンパク尿の程度でサブステージが決まります。SDMAはIRISの2023年改訂ガイドラインでも評価項目として位置づけられており、特に早期ステージの判定で重要性が増しています。

● ステージ1:クレアチニン値は正常範囲内だが、腎臓の形態異常や持続的なタンパク尿など何らかの腎臓の異常所見がある段階。持続的なSDMAの上昇(>14 µg/dL)も診断根拠となります

● ステージ2:軽度〜中等度の腎機能低下。日常ケアと定期モニタリングが重要

● ステージ3:中等度〜高度の腎機能低下。積極的な治療が必要になることが多い

● ステージ4:重度の腎機能低下。集中的な管理が必要

ステージの判断は複数回の検査結果と臨床症状を総合して担当の獣医師が行います。一度の数値だけで判断されるわけではありません。

検査結果を日常ケアに活かすために

血液検査の数値を知ることは、日常ケアの方向性を決める上でとても役立ちます。

● BUNが高め→BUNが高い原因は腎機能低下以外にも複数あります(前述)。腎機能低下が原因の場合はタンパク質の過剰摂取を避け、水分を増やすことが助けになります

● リンが高め→リンを多く含む食材を控える・療法食の検討

● カリウムが低め→担当の先生に補給方法を相談する

● 数値が安定している→今のケアを継続する

次回の検査結果を持って担当の先生に「この数値に対してできることはありますか」と聞くことで、より具体的な日常ケアの方向が見えてきます。

まとめ

BUN・クレアチニン・リンの3つの数値は腎臓の状態を理解する上で基本的な指標です。それぞれの意味を知っておくことで、検査結果をただ受け取るだけでなく、日常ケアに活かすことができます。定期的な検査と並行して、日常の食事・水分・吸着ケアを組み合わせることが腎臓病の長期管理に役立ちます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による個別の診断・治療・処方の代替となるものではありません。ペットの健康に関する最終的な判断は、必ず担当の獣医師にご相談ください。

詳しくは免責事項をご確認ください。

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